児童養護
2019年05月10日
「当事者」じゃない私がどこまでできるか。
「あなたに私たちの何がわかるんですか?」by施設出身者
「子どもたちの事情をわかってないのに無責任にかかわらないでほしい」by施設職員
「政治家にでもなりたいのですか?子どもたちを自分のために利用しようとしている」by施設長
そんなことを言われる度に悲しくなり、むなしくなりました。
私が施設出身者、もしくは元施設職員だったら、絶対に言われないだろう言葉です。
施設職員になったら信用してもらえるのかなと考えたこともあります。
でも、そうしなかったのは、そういう身内ではない人を排除する風潮に負けるのが悔しかったから。
施設退所者でもなく、元職員でもない、福祉や教育の分野の知識も経験もなかったド素人の私に、どこまでできるか試してみたい気持ちがありました。
結果的に、良かったと思います。
わからないから、人に聞く。学ぼうとする。
肌感覚では理解できないから、自分のわかる言葉に落とし込もうとする。言語化する。
今は、当事者じゃないからこそ、できることがあると思っています。
当事者じゃない人をこの活動に巻き込んでいこうとするときに、当事者じゃない人の感覚で物事を見られるんだと思います。
I am OK, you are OK.
うちの団体モットーの一つ。
自分を自分で認められるし、相手は相手で尊重する。
みんながそうであったら、もっと生きやすい社会になると思うんだけどな。
ちなみに、私は社会的養護の当事者じゃないけど、たぶん発達障害の当事者ではあります。(診断は受けなかったから証明はできないけど)
当事者への憧れ(!)から、それに気づいたときはちょっとうれしかったりして。^^
私がこの活動をするきっかけとモチベーション
その不満は、自分のキャリアを築くための研修に向かい、そこで研修のOJTとして事業計画を作ることになったのです。
その事業計画のテーマが、「企業が児童養護施設を支援する事業」で、私は施設のニーズを探るための調査をし、その時作った事業プランが、いまのブリッジフォースマイルになりました。
当時の私が、居てもたっても居られなくなったのが、ある施設長の話でした。
「職員になる人にはどんな要件があるのですか?」
「最低2年勤めてくれることをお願いしています。職員は虐待などで傷ついた子どもたちをケアしますが、子どもたちはその職員が信頼できるかどうか試すために、わざと職員を困らせる行動をします。暴言や暴力をぶつけることもあります。休みの日も担当の子どもが問題を起こせば、呼び出されます。職員は疲れ果て、バーンアウトして辞めてしまいます。子どもたちはますます大人を信頼できなくなります。悪循環です。」
子どもたちは支援が必要なのに、その支援する大人たちもへとへとで苦しんでいる。これは、なんとかしなくちゃ…。
この事業プラン作成を依頼してきた企業のように、社会には余裕があり、この問題に関心のある人たちは確実にいるのに。どうしたら、この人たちを子どもたちへの支援に関わってもらえるようにできるだろう。
社会の人たちを子どもたちの支援につなげたいという思いが、ブリッジフォースマイル名前の由来であり、ミッションなのです。
どうやったら、子どもたちの現状を知ってもらうことができるか。
どうやったら、自分の時間やお金を使っても支援する価値があると思ってもらえるか。
どうやったら、子どもたちの役に立つ支援ができるか。
今でもずっと考えています。
2018年02月19日
特別養子縁組を考える
日本財団とヒューマンライツウォッチ(HRW)が主催するもので、女優のサヘルローズさんが司会、塩崎大臣が来賓挨拶、福岡児相の藤林所長が貴重講演、HRWの土井さんがモデレーターで、特別養子縁組をした養親、養子、里親、施設退所者などの当事者によるパネルディスカッションというたいへん豪華で充実した内容でした。
こういうセミナーに参加するのはとても久しぶりだったので、勉強になりましたし、純粋に楽しかったです。
さて、昨今、国は施設養護から家庭的養護に大きく舵を切っており、これからは里親家庭、特別養子縁組を増やしていこうという方針がとられています。
まず、スタンスを明確にしておきますが、私個人として、この方針に賛同しています。
子どもにとって、安定した愛着関係、一般家庭と近い生活環境、一人ひとりに合わせた対応が望ましいことに異論を唱える人はいないでしょう。
経済面でも、施設よりも里親、養親の方が安くすみます。
ですが、進め方に違和感があって純粋な気持ちで応援できない、というのが正直なところです。
「施設じゃダメ。施設は悪だから。」と、感情を煽っているように感じられるからです。
・施設で育った子は愛情をかけてもらえなかった
・施設に長く居た子は問題行動が多い
・施設は、子ども(=お客)が来なくなるから、猛反発している
こういう論調に、施設も反発しています。
・養親、里親希望者は、子どもを選り好みする。
・難しくなると、すぐ投げ出す。
・虐待報告件数、措置変更回数は、施設よりも里親の方が比率は高い。
同じ子どもの支援に携わる大人が対立してるって、本当に残念です。
どちらにも、メリット、デメリットがあって、子どもの状況に合わせて選べればいい。
乳児や幼児で、家庭復帰が見込めないなら、養子縁組がいい。
高度な難しい支援が求められる時は、チームで対応できる施設の方が良い。
安定した子なら、経験の浅くても里親家庭で大丈夫だろう。
里親と上手く行かないときは、施設に措置変更するのもアリ。
選択肢が多いことは単純に子どもの利益になります。
支援の担い手が増えることは、支援者側も楽になると私は思います。
さて、前置きが長くなりました、今回、藤林所長からの基調講演では、支援者間の対立を煽るのではなく、制度変更で広がる可能性を伺うことができました。
民法の改正により、親の同意が無くても、家庭復帰の目途の立たない子どもを特別養子縁組に繋げられるようにする、というものです。
親の所在不明、連絡拒否など、育てる意欲がない場合でも、同意が得られないと動けない。連絡が取れても説得までに時間がかかる、いったん同意しても後から覆されることがある。
そんな状況を、法律を変えることで、施設にいる子どもを早く安定した家庭に移すことが可能になる。
これ、すごく良い策ですね。
でも、まだまだ検討すべきことが残っているそうです。
「特別養子を中心とした養子制度の在り方に関する研究会」で審議されているそうですので、私も注目していきたいと思います。
2016年02月26日
国に期待する、新しい退所後支援制度
今朝のNHK「おはよう日本」で、児童養護施設のことがニュースになりました。取り上げていただいたNHKさま、ありがとうございました!
長きにわたり対応してきたゆってぃ、おつかれさまでした! 取材に協力してくれた退所者とその出身施設のみなさま、ありがとうございました。
さて、その中で、児童養護施設で暮らせる期間を22歳まで延長する方向で厚労省が検討を始めるという話。
児童福祉法の年齢を20歳まで引き上げるという議論にも重なりますが、根本的な問題解決になるのかな~という疑問を持ちました。
理由は、3つあります。
1つ目はニュースでも指摘されていたように、施設の受け入れキャパが十分ではないから。
虐待で保護が必要な子どもたちは増加している中、退去期限が延びればさらに枠を減らすことになってしまいます。
2つ目は、就職先や進学先が施設から通える場所とは限らないから。
交通の便が悪い場所にある施設は多く、そこから通うことを前提とすれば、ますます選択肢は狭まってしまいます。
3つ目は、施設の生活が延びること=自立ができる、とは言えないから。
親元にいて自立に迫られないため働かない若者がいるのを考えれば「自立を迫られる環境」というのは、マイナスの側面だけではありません。
一方で、ニュースでもちらっと紹介された退所後の生活資金の実質給付(児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業)は、とても良いと思っています。
これは、
-就職者であれば2年間の家賃相当額、
-進学者であれば正規修学期間の家賃相当額と生活費月5万円
5年間の就業で、返済が免除になる、というものです。
各施設の事情やそれぞれの進路選択で、制約を受けることはなく、誰でも公平に使えるものです。
この制度を活用すれば、経済面での自立のハードルは大きく下がります。
貸付&一定条件を満たせば返済免除、という形にしているのも、自立に向けたモチベーションを保ちやすくなります。
(「5年の継続就業」という条件が適当かどうかは、別にして)
今後の制度に期待したいのは、絶対に起こりうる「上手くいかなかった時」の対策です。
例えば、仕事を辞めてしまった時。
体調を崩して、働けなくなってしまった時。
ギャンブルにはまって、借金を抱えてしまった時。
人間関係が上手く行かず、メンタルが落ち込んでしまった時。
上手く行かなかった時、やり直しができる仕組みが必要です。
措置が切れても、何歳になっていても、戻れる場所があるというのは、大きな安心感につながります。
お金の心配なくご飯が食べられ、寒さに凍えることなく寝られ、必要な医療が受けられ、就労支援が受けられれば、
もう一度がんばってみよう、という意欲もわいてくるのではないかと思います。
失敗してもいい前提でもう一度やり直しが利く、一人ひとり全くことなる事情に柔軟に対応できる仕組みを、作ってほしいです。
2015年06月09日
『明日の子供たち』を読んで
私たちブリッジフォースマイルが行っている活動の意義を、ちゃんと言葉にしてもらったようで、とっても嬉しい!
子どもたちへの支援を、「未来への投資」とはっきりとメッセージを発しています。
2013年01月29日
「夢AWARD3」 ファイナリストとしてスピーチします!
そんな「みんなの夢アワード3」、
他の方々の事業計画、プレゼンがとても素晴らしくて、帰り道は、
「できるだけ原稿をみないように」
「かっこいい言葉でなく、素直な思い、具体的なエピソードを入れて」
など、アドバイスをする立場。
今回、自分がやってみて、全然思い通りに表現できないし、
なかなか覚えられなくて、苛立ちます。
こうしている間にも、
ルーキー(退所者)や、カナエルンジャー(カナエール奨学生)たちから、
応援メールや電話がくる。
「がんばってね! 今度は私がエールを送るね!」
嬉しいです。
そして、大切なこと、思いだしました。そう、私は彼らの代弁者なのでした。
彼らが日頃思っている悔しさを、不条理を、私は代弁する役割でした。
私が伝えなくちゃいけないのは、
「彼らの立ち向かう厳しい現実を知ってください。
そして、どうか彼らの夢を応援してください!」。
思いが伝わるよう、心をこめて、スピーチしよう。
ルーキーやルンジャーたちに対して、恥ずかしくないように。
カナエールを応援してくださる方は、こちらからお願いします!
⇒http://canayell.com/your_support.html
2012年10月28日
横浜市から、事業を受託しました!
「よこはまPort for」の利用案内です!

2011年03月20日
自分の活動に胸を張ろう!
お亡くなりになられた皆様のご冥福を心よりお祈りいたします。
被災された皆様、心よりお見舞い申し上げます。
まだまだたいへんな日が続くことと思いますが、どうぞ気持ちを強く持ってお過ごし下さい。
私の今の正直な気持ちを、記録しておこうと思います。
私は、あの大震災日、現実を全く直視しようとしていませんでした。目の前に迫っていたプロジェクトのイベントの準備に頭がいっぱいでした。 ただ、電車が動いてくれればいい位に考えていました。
本当に浅はかでした。
まさか、そのプロジェクトが中止となる可能性があるかもしれないなんて、微塵も思いませんでした。 こんなに社会が大きく変わることを、予想だにしていませんでした。
それから、3月中の予定を全てキャンセルにすることが決定してから、私は寝込んでしまいました。
それまで、張り詰めていた緊張の糸が、プツッと切れてしまったようでした。
体調の悪さに加えて、重い気持ちをずるずると引きずって、1週間を過ごしました。
重い気持ちというのは、もちろん、原発や余震への漠然とした不安もありましたが、どちらかというと、もっと自己中心的なこと。
これから数年は、日本中が震災復興に向かうんだろうな~。
ブリッジフォースマイルの活動も、縮小せざるをえないんだろうな~。
新しい奨学金支援プロジェクト「カナエール」なんて言ったら、
「不謹慎」「今は大学進学より人の命だろ」とかって言われちゃうんだろうな~。
多くの人の生死がかかっている時、こんな緊急事態の時に、そんなちっちゃなことを考えては、落ち込んでいました。
ツイッターで、この大震災にすぐに対応して、ぐいぐいとリーダーシップを発揮している人を見ては、自分の活動に執着している自分の器の小ささを思い知らされるのでした。
でも、しばらくして、多くの人はこの大惨事にどう振舞っていいのか、わからずにいるんだということがわかりました。 あ~私だけじゃないんだな。と、少し気持ちを落ち着けることができました。
今、ようやく、心身ともに、復活基調です。
私が代表を務めるNPOは、児童養護施設の子どもたちの支援を行っていますが、彼らは、「家族の絆」の部分が大きく欠如しています。
この大震災で、家族や親戚が助け合う場面も多々目にする中、一層さびしい思いをしているのではないかと心配です。
地震の日、私たちが連絡先を知っている退所者80人に安否確認のメールを送ったところ、すぐに65人から返信がありました。 「ありがとう」「大丈夫だったよ~」という声の中には、「えりほは大丈夫だった?」とこちらを心配してくれる声や、「こういうときに、メールくれたのB4Sだけだったから嬉しかった」という声もありました。
家族だけでない「つながり」も必要だと思いました。
いや、もしかしたら。
今回の震災で、家族のつながりを大切だ、と思ったのなら、家族を頼れない子どもたちを社会が支える仕組みは、なおさら大切なのでは?
今回の震災でも、多くの子どもたちが親を亡くしているかもしれません。その子どもたちが、希望を持って生きられる社会が必要なのでは?
まさにブリッジフォースマイルのミッションです!
私たちのNPOの活動は、震災復興に直接的な支援ではないかも知れないけど、だからといって、遠慮する必要は、全くないのかも知れない。
自分の活動を進めていくことに、なんとなく抱えている後ろめたさを、越えて行きたい。
批判を恐れずに、今、自分が取り組んでいる活動は、明日の日本につながっているんだ、と胸を張って行きたい。
もちろん、東北の被災者の方や、震災のために児童養護施設に入ることになった子どもたちのために、私ができることをやっていきたいと思っています。
あせらず、止まらず、退かず。
明日もがんばろう!
2011年01月25日
「保証人」に関わる問題
本日(!)、ソフトバンクの孫社長が児童養護施設の子どもたちが携帯電話を契約する際、
親の同意がなくても契約できるように「システムを変更する」とツイートされました!
とても、喜ばしいことです!
保証人の問題は、施設にいる子どもたちや、退所する子どもたちの前に立ちはだかる高い壁。
日本では、未成年の契約事は、法的な拘束力を持ちません。
未成年は、一方的な契約解除を申し出ることができます。
それでは困るので、未成年の契約には保護者のサインが求められます。
未成年に代わって、その契約の最終責任を取る人が「保証人」であり、保証人制度です。
児童養護施設の子どもたちにとって、保証人に関わる問題は、大きく3つあります。
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◆ 特別な事情を、理解してもらえない
施設の子どもたちは、親がいない、もしくは親がいても親を頼れない事情があって、施設で生活しています。
親が保証人になれないので、親代わりとして子どもたちを育てる施設の長が保証人となるしかありません。
ところが、親ではない「施設長」が、保証人となることを認めない、とする会社が、あるのです。
携帯電話会社だけでなく、不動産会社もそうです。
普通のルールに乗れないと、一律に排除されてしまうのです。
携帯電話の話で言うと、施設の子どもたちが持っているのは、圧倒的にauです。
auは、保証人が施設長でも、契約してくれたからです。
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◆施設長個人の負担になっている
2つ目の問題は、子どもたちの保証を「施設長個人が担っている」という点です。
以前、訪問した施設で聞いた話で、とてもショックだったことがあります。
ある施設長。
「僕は、この仕事(施設長)を継ぎたくありませんでした。
子どもの時、施設長だった祖父のところには、よくヤクザが借金の取り立てに来ていて、怖かった。
祖父は、子どもたちの保証人になったことで、5000万円もの借金を負っていて、
ようやく、昨年その借金を返し終わったんです。」
子どもの保証人となったことで、数百万の借金を負っている施設長は珍しくありません。
施設によっては、退所者の保証人は一切引き受けない、という施設が少なくないのも、うなづけます。
そんな事情から、平成19年、厚生労働省は、「身元保証人確保対策」を打ち出しています。
もし、施設長が保証人になったことで損を被った場合、公的資金で補填してもらえる、という内容です。
しかしながら、この制度にもいろいろな問題があって、実際には使われてなかったり、自治体によっては
まだ制度自体が構築されてなかったりします。
(参照→http://bridge4smile.dreamlog.jp/archives/4966289.html)
そもそも論を言えば、施設は、子どもを養育することを「知事から委託」されているに過ぎないので、
本来、最終責任をとるべきは「知事」になるはずなんですけどね。
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◆ 18歳で公的に支援が終わる
最後に指摘したいのは、「日本の法律の不備」です。
20歳からしか、成人として契約を交わせない日本社会なのに、子どもたちへの公的支援は、児童福祉法に
定められた「18歳」で終わります。
18歳から20歳までの2年間は、どの法律が、施設の子どもたちを守ってくれるのでしょうか?
まさに法の落とし穴です。
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私は、確実に子どもたちを自立につなげるために、少なくとも20歳まで、もし大学等に進学する場合は、
その卒業までの生活を、公的に保証してほしいと考えています。
昨年の法改正で、必要があれば、20歳まで施設にいられることになりました。
(といっても、病気や精神疾患など、本当に特別な場合だけです。)
でも、施設で生活していない場合でも、契約の保証人は知事がなるとか、住宅費は公費で負担する、
ということが、あってもいいのでないかと考えます。
もちろん、退所した子どもたちの生活を支える役割を担う「人材」も、必要です。
この、退所後支援を行う人材については、また改めて。
2011年01月20日
施設職員の仕事のたいへんさ
タイガーマスク運動のおかげで、配置基準が、37年ぶりに見直されようとしています。
職員増員は、職員達の切なる願い。
それは、施設職員の仕事が、肉体的にも、精神的にも、とてもとてもたいへんだからです。
■3年以内で辞める職員は、54%
以前、ある施設を訪問した際、職員の採用条件が、「2年間は勤めること」と聞いて驚きました。
実際、19年度、東京都の施設職員を対象に行われた調査では、次の通りでした。
3年以内で辞める職員は、54%
4年以内で辞める職員は、64%
子どもたちと共に生活をし、親代わりとなって、支える職員が、すぐに辞めてしまう厳しい仕事であることはデータからご理解いただけるでしょうか。
配置基準の見直しは、喫緊の課題だったのです。
その背景に何があるかをご説明します。
■職員1人に対して、子どもたち6名??
労働基準法に従い、8時間勤務とすると、一日24時間を3交代で担当することになります。
単純に計算すると、自分の勤務時間は、休みに入っている職員2人が担当する子ども12名をあわせて面倒を見ます。
つまり、18人!
施設職員は、福祉や保育の学校を出て、就職します。
学校を出たばかりの20代の職員が、2歳から18歳まで18人の子どもの面倒を見られると思いますか?
とにかく衣食住だけ提供すればよかった戦後とは、時代が違います。
■休日も呼び出し
そんなわけで、担当の子どもに何かあった場合は、シフトが休みであっても、容赦なく呼び出されます。
いえ、18人のうちの誰かに、何かがあれば、職員の手が1人分かかり、残る17人の面倒を見るために他の人がサポートに入らざるを得ないのです。
■家庭との両立の難しさ
また、せっかく経験を積んでも、結婚や出産で辞めざるを得ない女性がたくさんいます。
親代わりとなるわけですから、「子どもたちが学校から帰ってくる時間、休日」が、忙しい時間です。
家庭を持ち、自分の子どもを育てることになったら、まさに同じ時間帯になってしまいます。
女性が家庭と仕事を両立するのは、本当に難しい状況です。
■仕事の種類が多くなっている
・子どもの日常的なケア
・トラブル(問題行動)への対応
・学校との調整
・親との調整
・心理士や、ボランティアとの調整
・児童相談所や、関係機関との連携
・報告書作成
・進路指導
・学習支援
・退所後支援
本当にたくさんの仕事がありますが、ローテーションで子どもたちの面倒を見るため、職員全員、同じ仕事をしなければならないのです。
■精神的なたいへんさは、計り知れない
虐待で傷ついた子どもたちは、施設に来ると、内面に秘めていた問題を噴出させます。
暴力、不登校、非行など、問題行動からトラブルにつながることが少なくありません。
「なぜ、施設で生活しなければならないのか。」
本来は、親に向けられるべき怒りの矛先は、目の前に居る施設職員に向かってきます。
子どもが発する汚い言葉、厳しい言葉は、これまで子どもが受けてきたもの、と頭で理解しても、それを面と向かって受ける職員たちの精神的負荷は、並大抵のものではありません。
子どもを支えるべき職員の就労環境が整っていない状況で、傷ついた子どもたちを適切にサポートできるでしょうか。
職員が余裕をもって安心して働き続けられるように、職員の増員は不可欠です。