児童養護

2016年02月26日

国に期待する、新しい退所後支援制度

今朝のNHK「おはよう日本」で、児童養護施設のことがニュースになりました。取り上げていただいたNHKさま、ありがとうございました!
長きにわたり対応してきたゆってぃ、おつかれさまでした! 取材に協力してくれた退所者とその出身施設のみなさま、ありがとうございました。

さて、その中で、児童養護施設で暮らせる期間を22歳まで延長する方向で厚労省が検討を始めるという話。
児童福祉法の年齢を20歳まで引き上げるという議論にも重なりますが、根本的な問題解決になるのかな~という疑問を持ちました。

理由は、3つあります。

1つ目はニュースでも指摘されていたように、施設の受け入れキャパが十分ではないから。
虐待で保護が必要な子どもたちは増加している中、退去期限が延びればさらに枠を減らすことになってしまいます。

2つ目は、就職先や進学先が施設から通える場所とは限らないから。
交通の便が悪い場所にある施設は多く、そこから通うことを前提とすれば、ますます選択肢は狭まってしまいます。

3つ目は、施設の生活が延びること=自立ができる、とは言えないから。
親元にいて自立に迫られないため働かない若者がいるのを考えれば「自立を迫られる環境」というのは、マイナスの側面だけではありません。

一方で、ニュースでもちらっと紹介された退所後の生活資金の実質給付(児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業)は、とても良いと思っています。

これは、
-就職者であれば2年間の家賃相当額、
-進学者であれば正規修学期間の家賃相当額と生活費月5万円

5年間の就業で、返済が免除になる、というものです。

各施設の事情やそれぞれの進路選択で、制約を受けることはなく、誰でも公平に使えるものです。
この制度を活用すれば、経済面での自立のハードルは大きく下がります。

貸付&一定条件を満たせば返済免除、という形にしているのも、自立に向けたモチベーションを保ちやすくなります。
(「5年の継続就業」という条件が適当かどうかは、別にして)

今後の制度に期待したいのは、絶対に起こりうる「上手くいかなかった時」の対策です。

例えば、仕事を辞めてしまった時。
体調を崩して、働けなくなってしまった時。
ギャンブルにはまって、借金を抱えてしまった時。
人間関係が上手く行かず、メンタルが落ち込んでしまった時。

上手く行かなかった時、やり直しができる仕組みが必要です。

措置が切れても、何歳になっていても、戻れる場所があるというのは、大きな安心感につながります。
お金の心配なくご飯が食べられ、寒さに凍えることなく寝られ、必要な医療が受けられ、就労支援が受けられれば、
もう一度がんばってみよう、という意欲もわいてくるのではないかと思います。

失敗してもいい前提でもう一度やり直しが利く、一人ひとり全くことなる事情に柔軟に対応できる仕組みを、作ってほしいです。



drecom_bridge4smile at 11:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2015年06月09日

『明日の子供たち』を読んで

昨年8月に幻冬舎より出版された有川浩さんの著書で、児童養護施設をテーマにした『明日の子供たち』。

B4S内でも話題になっていたのは知っていたのですが、なかなか時間がとれずにいました。
日本人会館の図書室にあったのを借りてきて、一気に読みました!

とにかく、嬉しかったです。

◆嬉しかったこと。(その1)

読んでいて、あまりにリアルでびっくりしました。何一つ違和感ありませんでした。

ごくごく自然な日常の中での出来事や登場人物の細やかな心理描写が、なかなか理解されにくい子どもたちの感情、支援における難しさ、職員達の苦悩をとても鮮明に表現していました。

この本のおかげで、施設のこと、子どもたちのことを理解してもらうのが、とても楽になります。
外部にいる私ですらこんなに嬉しいのですから、職員も、子どもたちも、きっと本当に喜んでいるだろうな~と思い、また嬉しくなりました。


◆嬉しかったこと。(その2)

この本のきっかけになったのは、どうも兵庫にある児童養護施設の高校生が書いた手紙だったようなのです。

文中、施設で生活する高校生カナは、次のような手紙を人気作家に送っています。
===
(前略)…先生に児童養護施設をテーマに本を書いてほしいんです。先生の書かれる本の影響力はすごいです。
先生が本を出すと、たくさんの人が先生の本を読みます。もし先生が児童養護施設をテーマに本を書いたら、
今までの施設のイメージが変わると思います。
いつも施設に対するイメージのせいで辛い思いをする子がたくさんいます。
世間の勝手なイメージのせいで、これ以上傷つくのは嫌なんです。私たちは何も悪くないのに。…

(中略)…私たちはあと1年で施設を出ますが、他にも施設の子がたくさんいます。
…私たちはもうすぐ退所してしまいますが、私たちより小さい子にこれ以上つらい思いをしてほしくないんです。…
===

施設に関する正しい情報が少ないために、施設の子どもたちは「かわいそう」等の偏見を持たれがちです。
でも、偏見を変えていくのは本当に難しいことです。

一人の高校生の行動が、こうして社会に大きな影響を与えていくって、嬉しすぎるじゃないですか!
笹谷美咲さん、ありがとうございます!


◆嬉しかったこと。(その3)

コレ、私たちのことじゃん!っていう行があります。

『明日ママがいない』を『ママがいなくなった』というタイトルのドラマにして、功罪を論じる場面。
===
「でも、東京じゃドラマが終了してからさっそく『ママがいなくなったを超えて』とか銘打ってシンポジウムをやったらしいよ。一般参加者の数が新記録を達成して大盛況だったって。」
「たくましいですね!」
===

思い起こせば、幻冬舎の方、会場にいらしてました。^^
取り上げていただき、ありがとうございます♪


◆嬉しかったこと。(その4)

参考文献に私の編著『巣立ちのための60のヒント』(明石書店)も掲載いただいて、ありがとうございます♪


◆嬉しかったこと。(その5)

私たちブリッジフォースマイルが行っている活動の意義を、ちゃんと言葉にしてもらったようで、とっても嬉しい!

まず、施設の子どもたちの進学の問題が、ど真ん中に据えられています。
子どもたちにとって、職員にとって、進学がどれだけ難しい選択か、奨学金がどれだけ重要か、描かれています。

また、施設入所者、退所者たちの居場所の話も出てきます。
一般の人に理解してもらいにくい支援を「リラックスできる場所」として、必要性を訴えています。
子どもたちへの支援を、「未来への投資」とはっきりとメッセージを発しています。 


…と、いろいろ嬉しくて、一人喜んでいる次第です。^^
ぜひ、多くの人に読んでいただきたい本です。

そして、次は、この小説がドラマになるといいな~と思います。
脚本は中園ミホさんがいいなあ~。

日テレさん、ぜひ『明日ママがいない』の汚名挽回を!!

IMG_2893
 


drecom_bridge4smile at 20:05|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2013年01月29日

「夢AWARD3」 ファイナリストとしてスピーチします!

===
最終選考は、日本武道館で8000人を前に「夢」のプレゼンテーション。
優勝したら、2000万円と、参加企業からのご支援が受けられる。
===

そんな「みんなの夢アワード3」、
知人から、夢アワードに応募してみたら? と誘われて、
10月26日の締切1時間前に滑り込みでエントリーしました。
ちなみに、私がエントリーした夢は「カナエール全国展開」。

二次選考では、課題を締切2時間遅れで提出。
三次選考会では、事業計画作成が間に合わず、プレゼンのみで勝負。
最後まで話し終わらないうちに終了を知らせるアラームが…。

他の方々の事業計画、プレゼンがとても素晴らしくて、帰り道は、
自分のダメっぷりを痛感、しょんぼり…。

…が、なんと! 奇跡的に三次選考通過のご連絡をいただきました!!
 
そして、最終選考は、明日の1月30日。
綱渡りで、つないだ全国展開への希望。

日頃、奨学金支援プログラムカナエールでスピーチコンテストに出場する
カナエルンジャーたちに対して、

「できるだけ原稿をみないように」
「かっこいい言葉でなく、素直な思い、具体的なエピソードを入れて」

など、アドバイスをする立場。

今回、自分がやってみて、全然思い通りに表現できないし、
なかなか覚えられなくて、苛立ちます。

こうしている間にも、
ルーキー(退所者)や、カナエルンジャー(カナエール奨学生)たちから、
応援メールや電話がくる。

「がんばってね! 今度は私がエールを送るね!」

嬉しいです。

そして、大切なこと、思いだしました。そう、私は彼らの代弁者なのでした。
彼らが日頃思っている悔しさを、不条理を、私は代弁する役割でした。

私が伝えなくちゃいけないのは、

「彼らの立ち向かう厳しい現実を知ってください。
そして、どうか彼らの夢を応援してください!」。

思いが伝わるよう、心をこめて、スピーチしよう。
ルーキーやルンジャーたちに対して、恥ずかしくないように。 


カナエールを応援してくださる方は、こちらからお願いします!
http://canayell.com/your_support.html

drecom_bridge4smile at 21:54|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2012年10月28日

横浜市から、事業を受託しました!

ご報告が遅くなりましたが、横浜市からアフターケア事業を受託しました!

収入が不安定なNPOとしては、行政からの事業受託は、本当にありがたいことです。
いま、横浜市からの期待、施設関係者からの期待をひしひしと感じています。
がんばらなくちゃ~~~!

さて、今日までの簡単な経緯をまとめておきます。
これから、拠点を立ち上げようという方の参考になるかも、と思ったので。

◆2011年秋。
横浜市の担当者7名が、東京まで視察にお越しになりました。

◆2012年6月。
横浜市から「退所者のためのアフターケア事業『イツモ・プロジェクト』」の公募が出ました。
募集要項の中で求められているのはたいへん盛り沢山な内容でした。
居場所・相談事業、セミナー事業、住宅支援、就労支援、当事者活動支援など。

どこまでできるのか?と不安が募りました。
それでも、ぜったい事業受託したい!という思いがありました。
B4Sのメンバーは、すでに既存業務で手いっぱいのため、受託が確定するまでの検討、申請は、私と理事の小川さんの二人で行うことにしました。

とにかく攻めの姿勢の私と、堅実な守りの姿勢の小川さんとで、「ここまでならできるライン」を相談して、事業計画を提出しました。

◆2012年7月。
初めて、入札に参加しました。
事前に、採用基準も提示されていて、とても公平な制度だと思いました。

うち以外に、もう1社が入札に参加していました。
若年生活困窮者や、ニート、引きこもりの支援を行う団体だったそうです。

5名の面接官を前に、20分程度のプレゼンと質疑応答をしました。
面接を受けるのは、久しぶりでしたので、とっても新鮮でした。

◆2012年8月16日。
受託内定のお知らせが来ました!
ここから、スタッフ確保、拠点の立ち上げに向けて急いで対応必要でした。

◆2012年9月。
退所者の居場所となる拠点の選定も開始しました。
一級建築士であり、不動産関係に強いB4Sサポーターが、横浜街歩きをして10か所ほど、候補を挙げてくれました。

半日かけて、横浜市の担当者2名とB4S3名で候補の7軒を回りました。
最後に内覧した「ハイツ横浜」に、全員一致で決定!

同時に、スタッフの募集を開始しました。

ネット上で公募したのですが、残念ながら、思ったほど応募がありませんでした。
結局応募のあった4名のうち、3名と面接をして、1名を採用。

残りの2人は、すでに別のつながりで採用を決定しました。
一人がB4Sで長く活躍していたサポーターが転職を決意、もう一人は、B4Sメンバーの紹介で面接、採用しました。

◆2012年9月25日
林文子市長と、記者会見。
初めての記者会見の経験でした。
インターネット中継もあって、ちょっとドキドキしました。

◆2012年10月1日
事業開始。といっても、まだリフォームができてなかったため、電話だけの受付でした。

リフォームは、社会貢献にとてもアツイ会社で有名な株式会社ソーケンさまにお願いし、最初の相談から約3週間、工事は1週間の超スピード対応で板張り、天井のダウンライト、個室の間仕切りなどを施工いただきました。

中の家具、インテリアは、unicoというブランドの家具をプロデュースする株式会社ミサワさまに全面的に協賛していただくことになりました。

◆2012年10月5日
居場所事業を行う「日向ぼっこ」や、難しいアフターケアを請け負う「ゆずりは」を訪問。
事業内容を固めていきました。

◆2012年10月18日。
家具搬入。株式会社ミサワさまの社員3名も、駆けつけてくれました。
夜は、横浜メンバーの歓迎会。

そして、拠点の名称決定!
「よこはま Port for(ポートフォー)」
みんなが帰ってくる港にしたい!という思いから名づけました。

◆2012年10月22日~24日
内覧会。来所者は、3日間で80名。
13時~17時まで、30分刻みで説明を行いました。
私は、同じことを19回説明しました。

◆2012年11月3日(土)15-20時
オープニングパーティ。は、これからです。
横浜の施設退所者の方、横浜にお住まいの退所者の方、横浜に遊びに来たい方、ぜひお越しください!


振りかえれば、この2か月、本当に怒涛の忙しさでした。

自分ではあまり意識しませんでしたが、心理的なプレッシャーも大きかったようで、胃腸の調子がわるくなったりもしました。

でも、「まだないもの」を形にするとき、私はすごくワクワクするし、力が沸くんだ、ということを改めて実感しました。

また、久しぶりに施設を訪問したり、施設長や職員と話をしたりするのも、楽しかったです。
立ち上げ当初はときどき拠点のシフトにも入るのだけど、やっぱり現場は楽しいなと思います。


いろんなことを考えさせられた、横浜市事業の立ち上げでした。

もちろん、事業はまだ始まったばかり。事業の骨子も、5割程度しか完成していません。
ここからはメンバーが主体となって、よりよい事業を作って行ってくれると思います。

私も、後ろからしっかりサポートしていきたいと思います。

さて、以下は、事業の柱の一つである、退所者のための居場所事業、
「よこはまPort for」の利用案内です!
(ホームページ完成まで、もう少しお待ちを!)
====================================

●対象

児童養護施設、里親家庭、ファミリーホーム等の退所者、中高生
(横浜市外の方も利用可能)

●場所

横浜市西区高島2-5-5 ハイツ横浜203

※横浜駅東口から徒歩5分です。

●オープン時間

火水は、14-18時
金土日は、14-20時

※金土日は、みんなで一緒にご飯を食べますよ。
(300円かかります)
(16時までに電話予約)
※利用者登録が必要です。
(登録はもちろん無料)

●連絡先

電話 045-548-8011
FAX 045-548-8022

担当:前畑、高橋、吉原

IMG_2229

IMG_2230

====================================


drecom_bridge4smile at 19:01|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2011年03月20日

自分の活動に胸を張ろう!

東日本大震災から、1週間が過ぎました。

お亡くなりになられた皆様のご冥福を心よりお祈りいたします。
被災された皆様、心よりお見舞い申し上げます。
まだまだたいへんな日が続くことと思いますが、どうぞ気持ちを強く持ってお過ごし下さい。

私の今の正直な気持ちを、記録しておこうと思います。

私は、あの大震災日、現実を全く直視しようとしていませんでした。目の前に迫っていたプロジェクトのイベントの準備に頭がいっぱいでした。 ただ、電車が動いてくれればいい位に考えていました。
本当に浅はかでした。

まさか、そのプロジェクトが中止となる可能性があるかもしれないなんて、微塵も思いませんでした。 こんなに社会が大きく変わることを、予想だにしていませんでした。

それから、3月中の予定を全てキャンセルにすることが決定してから、私は寝込んでしまいました。
それまで、張り詰めていた緊張の糸が、プツッと切れてしまったようでした。
体調の悪さに加えて、重い気持ちをずるずると引きずって、1週間を過ごしました。

重い気持ちというのは、もちろん、原発や余震への漠然とした不安もありましたが、どちらかというと、もっと自己中心的なこと。

 これから数年は、日本中が震災復興に向かうんだろうな~。
 ブリッジフォースマイルの活動も、縮小せざるをえないんだろうな~。
 新しい奨学金支援プロジェクト「カナエール」なんて言ったら、
 「不謹慎」「今は大学進学より人の命だろ」とかって言われちゃうんだろうな~。

多くの人の生死がかかっている時、こんな緊急事態の時に、そんなちっちゃなことを考えては、落ち込んでいました。
 ツイッターで、この大震災にすぐに対応して、ぐいぐいとリーダーシップを発揮している人を見ては、自分の活動に執着している自分の器の小ささを思い知らされるのでした。

でも、しばらくして、多くの人はこの大惨事にどう振舞っていいのか、わからずにいるんだということがわかりました。 あ~私だけじゃないんだな。と、少し気持ちを落ち着けることができました。


今、ようやく、心身ともに、復活基調です。


私が代表を務めるNPOは、児童養護施設の子どもたちの支援を行っていますが、彼らは、「家族の絆」の部分が大きく欠如しています。
この大震災で、家族や親戚が助け合う場面も多々目にする中、一層さびしい思いをしているのではないかと心配です。

地震の日、私たちが連絡先を知っている退所者80人に安否確認のメールを送ったところ、すぐに65人から返信がありました。 「ありがとう」「大丈夫だったよ~」という声の中には、「えりほは大丈夫だった?」とこちらを心配してくれる声や、「こういうときに、メールくれたのB4Sだけだったから嬉しかった」という声もありました。

 家族だけでない「つながり」も必要だと思いました。

 いや、もしかしたら。

今回の震災で、家族のつながりを大切だ、と思ったのなら、家族を頼れない子どもたちを社会が支える仕組みは、なおさら大切なのでは?
今回の震災でも、多くの子どもたちが親を亡くしているかもしれません。その子どもたちが、希望を持って生きられる社会が必要なのでは?

まさにブリッジフォースマイルのミッションです!

私たちのNPOの活動は、震災復興に直接的な支援ではないかも知れないけど、だからといって、遠慮する必要は、全くないのかも知れない。

自分の活動を進めていくことに、なんとなく抱えている後ろめたさを、越えて行きたい。
批判を恐れずに、今、自分が取り組んでいる活動は、明日の日本につながっているんだ、と胸を張って行きたい。

もちろん、東北の被災者の方や、震災のために児童養護施設に入ることになった子どもたちのために、私ができることをやっていきたいと思っています。

あせらず、止まらず、退かず。

明日もがんばろう!

drecom_bridge4smile at 18:13|PermalinkComments(9)TrackBack(0)

2011年01月25日

「保証人」に関わる問題

本日(!)、ソフトバンクの孫社長が児童養護施設の子どもたちが携帯電話を契約する際、
親の同意がなくても契約できるように「システムを変更する」とツイートされました!
とても、喜ばしいことです!

保証人の問題は、施設にいる子どもたちや、退所する子どもたちの前に立ちはだかる高い壁。

日本では、未成年の契約事は、法的な拘束力を持ちません。
未成年は、一方的な契約解除を申し出ることができます。

それでは困るので、未成年の契約には保護者のサインが求められます。
未成年に代わって、その契約の最終責任を取る人が「保証人」であり、保証人制度です。

児童養護施設の子どもたちにとって、保証人に関わる問題は、大きく3つあります。

====

◆ 特別な事情を、理解してもらえない

施設の子どもたちは、親がいない、もしくは親がいても親を頼れない事情があって、施設で生活しています。
親が保証人になれないので、親代わりとして子どもたちを育てる施設の長が保証人となるしかありません。

ところが、親ではない「施設長」が、保証人となることを認めない、とする会社が、あるのです。

携帯電話会社だけでなく、不動産会社もそうです。
普通のルールに乗れないと、一律に排除されてしまうのです。

携帯電話の話で言うと、施設の子どもたちが持っているのは、圧倒的にauです。
auは、保証人が施設長でも、契約してくれたからです。

====

◆施設長個人の負担になっている

2つ目の問題は、子どもたちの保証を「施設長個人が担っている」という点です。
以前、訪問した施設で聞いた話で、とてもショックだったことがあります。

ある施設長。
「僕は、この仕事(施設長)を継ぎたくありませんでした。
子どもの時、施設長だった祖父のところには、よくヤクザが借金の取り立てに来ていて、怖かった。
祖父は、子どもたちの保証人になったことで、5000万円もの借金を負っていて、
ようやく、昨年その借金を返し終わったんです。」

子どもの保証人となったことで、数百万の借金を負っている施設長は珍しくありません。
施設によっては、退所者の保証人は一切引き受けない、という施設が少なくないのも、うなづけます。

そんな事情から、平成19年、厚生労働省は、「身元保証人確保対策」を打ち出しています。
もし、施設長が保証人になったことで損を被った場合、公的資金で補填してもらえる、という内容です。

しかしながら、この制度にもいろいろな問題があって、実際には使われてなかったり、自治体によっては
まだ制度自体が構築されてなかったりします。
(参照→http://bridge4smile.dreamlog.jp/archives/4966289.html)

そもそも論を言えば、施設は、子どもを養育することを「知事から委託」されているに過ぎないので、
本来、最終責任をとるべきは「知事」になるはずなんですけどね。

====

◆ 18歳で公的に支援が終わる

最後に指摘したいのは、「日本の法律の不備」です。

20歳からしか、成人として契約を交わせない日本社会なのに、子どもたちへの公的支援は、児童福祉法に
定められた「18歳」で終わります。

18歳から20歳までの2年間は、どの法律が、施設の子どもたちを守ってくれるのでしょうか?
まさに法の落とし穴です。

====

私は、確実に子どもたちを自立につなげるために、少なくとも20歳まで、もし大学等に進学する場合は、
その卒業までの生活を、公的に保証してほしいと考えています。

昨年の法改正で、必要があれば、20歳まで施設にいられることになりました。
(といっても、病気や精神疾患など、本当に特別な場合だけです。)


でも、施設で生活していない場合でも、契約の保証人は知事がなるとか、住宅費は公費で負担する、
ということが、あってもいいのでないかと考えます。

もちろん、退所した子どもたちの生活を支える役割を担う「人材」も、必要です。
この、退所後支援を行う人材については、また改めて。



drecom_bridge4smile at 06:55|PermalinkComments(9)TrackBack(0)

2011年01月20日

施設職員の仕事のたいへんさ

タイガーマスク運動のおかげで、配置基準が、37年ぶりに見直されようとしています。
職員増員は、職員達の切なる願い。
それは、施設職員の仕事が、肉体的にも、精神的にも、とてもとてもたいへんだからです。


■3年以内で辞める職員は、54%

 以前、ある施設を訪問した際、職員の採用条件が、「2年間は勤めること」と聞いて驚きました。
 
 実際、19年度、東京都の施設職員を対象に行われた調査では、次の通りでした。

 3年以内で辞める職員は、54%
 4年以内で辞める職員は、64%
 
 子どもたちと共に生活をし、親代わりとなって、支える職員が、すぐに辞めてしまう厳しい仕事であることはデータからご理解いただけるでしょうか。

 配置基準の見直しは、喫緊の課題だったのです。

 その背景に何があるかをご説明します。


■職員1人に対して、子どもたち6名??

 労働基準法に従い、8時間勤務とすると、一日24時間を3交代で担当することになります。
 
 単純に計算すると、自分の勤務時間は、休みに入っている職員2人が担当する子ども12名をあわせて面倒を見ます。

 つまり、18人!

 施設職員は、福祉や保育の学校を出て、就職します。
 学校を出たばかりの20代の職員が、2歳から18歳まで18人の子どもの面倒を見られると思いますか?

 とにかく衣食住だけ提供すればよかった戦後とは、時代が違います。

■休日も呼び出し

 そんなわけで、担当の子どもに何かあった場合は、シフトが休みであっても、容赦なく呼び出されます。
 いえ、18人のうちの誰かに、何かがあれば、職員の手が1人分かかり、残る17人の面倒を見るために他の人がサポートに入らざるを得ないのです。

 
■家庭との両立の難しさ

 また、せっかく経験を積んでも、結婚や出産で辞めざるを得ない女性がたくさんいます。

 親代わりとなるわけですから、「子どもたちが学校から帰ってくる時間、休日」が、忙しい時間です。

 家庭を持ち、自分の子どもを育てることになったら、まさに同じ時間帯になってしまいます。
 女性が家庭と仕事を両立するのは、本当に難しい状況です。


■仕事の種類が多くなっている

 ・子どもの日常的なケア
 ・トラブル(問題行動)への対応
 ・学校との調整
 ・親との調整
 ・心理士や、ボランティアとの調整
 ・児童相談所や、関係機関との連携
 ・報告書作成
 ・進路指導
 ・学習支援
 ・退所後支援

 本当にたくさんの仕事がありますが、ローテーションで子どもたちの面倒を見るため、職員全員、同じ仕事をしなければならないのです。

■精神的なたいへんさは、計り知れない

 虐待で傷ついた子どもたちは、施設に来ると、内面に秘めていた問題を噴出させます。
 暴力、不登校、非行など、問題行動からトラブルにつながることが少なくありません。

 「なぜ、施設で生活しなければならないのか。」
 
 本来は、親に向けられるべき怒りの矛先は、目の前に居る施設職員に向かってきます。
 子どもが発する汚い言葉、厳しい言葉は、これまで子どもが受けてきたもの、と頭で理解しても、それを面と向かって受ける職員たちの精神的負荷は、並大抵のものではありません。
 

子どもを支えるべき職員の就労環境が整っていない状況で、傷ついた子どもたちを適切にサポートできるでしょうか。

職員が余裕をもって安心して働き続けられるように、職員の増員は不可欠です。



drecom_bridge4smile at 07:44|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2011年01月19日

政治を動かす「タイガーマスク現象」

タイガーマスク現象で、長年の懸案でした職員配置基準の問題にまで、メスが入ろうとしています。

様々な課題がある中でも、配置基準の改善は、施設関係者の間では、切実な問題でした。
しかしながら、その増加費用は大きく、実現は不可能ではないかとあきらめムードさえ漂っていましたので、
本当に伊達直人様様でございます!


施設の問題として、もう一つ強く訴えたいことが、退所後の支援です。

◆退所した子どもへの公的支援は、皆無。

18歳になると、施設を退所しなければなりません。
また、18歳未満でも高校に通わない子ども(中卒で働く子や、高校中退する子)は、施設を出なければなりません。
昨年の法改正で、手続きをとれば、最長20歳の誕生日前日まで施設入所延長ができるようになりましたが、本当に特別な場合(病気や重度の障がいなど)だけです。

「児童福祉法」は、18歳の誕生日前日までの子どもを「児童」としているため、18歳になった子どもは、「児童福祉法」で守ってもらえないのです。

平成16年には、「退所後の支援」が、施設の役割として付加されましたが、予算が配分されたわけでもなく、努力義務に留まっています。
ただでさえ、人手不足ですから、施設を退所した子どもたちのサポートまで手が回らない施設が大多数です。

つまり、施設を出ると「公的支援は、なくなる」のです。


◆一人一人の事情に合わせた自立支援

私は、自立の準備が整ったかどうかは、年齢によって判断されるべきではないと思っています。
ましてや、中卒や、高校中退する子は、学歴の低さや対人関係力の低さなどから、生活困難に陥ることが簡単に想像できます。
「児童養護施設」という箱を出たら、「自立できるはずだから支援はしない」なんて、ありえないと思っています。

親の代わりに施設や里親など社会で育てている子どもたちです。
自立できるまで社会がサポートするのは、当然のことではないかと思います。

「家庭の事情」、「自立の準備度合い」、「今後の生活の見込み」など、子ども一人一人で、全く異なります。

しっかりしている子は、どんどん一人暮らしを経験させていったらいいでしょう。
施設出身者には、本当にびっくりするほどしっかりした子がいます。

一方で、ひどい虐待を受けていたり、施設で十分に心の傷を回復できてなかったりする子もいます。
自傷行為(リストカットなど)や、反社会的行為に走ってしまう子もいます。

まだ自立できない子には、サポートする側がしっかりと体制を整えて、サポートできたらよいと思います。

つまり、一人一人に合わせ、自立できるまでサポートできる、丁寧な支援体制が欠かせません。


◆タイガーマスク現象をブームに終わらせない

しかしながら、これまでできてないのには、いくつもの事情が重なっていると思います。

一番大きいのは、「政治に働きかけるチカラがなかったこと」。

経済力も、投票権も持たない子どもたちの環境を変えられるのは、「政治を動かす社会の関心」なんだと、
今回のタイガーマスク現象が教えてくれました。

「伊達直人」さんが、これからも、子どもたちを応援し続けること。
この現象をブームに終わらせないことが、子どもたちの状況を改善していきます。

私も、子どもたちを支援する立場から、積極的な発信を心がけます。
是非、今後も応援をよろしくお願いいたします。

 



drecom_bridge4smile at 07:23|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2011年01月16日

理想的な物品寄付とは?

前回、私が把握している施設側の事情をご説明しましたが、続いて私が考える、施設に喜ばれるだろう物品支援の方法について、ご紹介したいと思います。

===========================================================
●サンタプロジェクト
===========================================================

すでに、いくつかの会社で行われている、クリスマスのプレゼント提供です。

・例えば予算を「5000円」と決めて、施設の子どもたちからクリスマスプレゼントの希望を聞きます。
・会社は、それを受けて、社員から提供者を募ります。
・提供することになった社員は、自分の担当する子どもの希望を叶えるべく、プレゼントを購入し、メッセージを添えて施設に提供します。
・施設で行われるクリスマスパーティに、サンタの格好をした社員が訪問し、プレゼントを渡すこともあります。

このプログラムは、継続されればなお嬉しいです。
継続いただけると、寄付する人も子どもの成長を追うことができるような関係になります。
また、施設は、年間の予算計画を立てやすくなり、他の事にお金を回すことができるようになります。


===========================================================
●ネット仲介システム
===========================================================

インターネットで、寄付の申し出ができ、福祉施設の人は欲しいものを選べる仕組みがあればいいなと思います。

・寄付をしたい人は、画像や商品情報をインターネットサイトにアップします。
・欲しいものがある施設は、掲載された中から、選びます。
・反対に、欲しいものがある施設は、「ください!」をサイトへ投稿します。
・何かを提供したい、と思う人は、そこから選んでプレゼントができます。


こうすれば、マッチングして初めてモノが提供されますので、無駄がありません。

児童養護施設を始め福祉施設の方が、必要な時に、必要な品物を入手することができます。

さらに理想を言えば、配送を宅配便業者が、無料、もしくは格安で請け負ってくださるといいのですけど。

なお、物品の仲介は、「善意銀行」という公共の仕組みがありますが、あまり積極的に活用されていないようです。

また、ブリッジフォースマイルには、高校3年生向け「巣立ちプロジェクト」というセミナープログラムの参加者を対象に、生活必需品の寄付仲介を行っていますが、マッチングの手間や、送料の自己負担、マッチングの時期は2-3月のみ、という課題を抱え、上手く回っていません。


===========================================================
●リサイクル業者の協力による家電や家具の仲介システム
===========================================================

18歳で、一人暮らしを始める子どもたちに必要となる、生活家電、家具などの生活必需品を、中古品を扱うリサイクル業者のご協力で提供できればいいなと思います。

・寄付をしたい人は、その物を店舗に届ける、もしくは家に査定&引き取りに来てもらう。
・買取金は受け取らない
・集まった物品の買取相当額のバウチャーを発行し、寄付提供を希望する施設に分配する。
・バウチャーの分配を受けた福祉施設は、直接店舗に出向き、欲しいものを選び受け取る

実現したら、すごくいいと思うのですが、実は、リサイクル業者さんにご相談したところ、なかなか採算の取れる持続可能な事業にはなりにくい、ということでした。
例えば、査定で0円または小額(買い取り価値がない)ということも、十分想定されるからです。

可能性を模索していますが、現在、実現には至っていません。


===========================================================

このように見ていくと、重要なポイントとして、「受け手が欲しいものを欲しいタイミングで選ぶことができる」というのが、キーになるのではないかと思っています。

寄付をする側も、受ける側もHAPPYになれる仕組みは、必ず創意工夫によって作ることができるだろうと思っています。



drecom_bridge4smile at 22:41|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2011年01月15日

児童養護施設への寄付について


ものすごく久しぶりのブログ更新になります。

タイガーマスクさんのおかげで、今、こんなに児童養護施設が注目されています。
啓発運動として、厚生労働省が推進している児童虐待防止のオレンジリボン運動は、なかなか広がらないのに、ブームっていうのはものすごい影響力を持つのだな、と実感しました。


さて、児童養護施設の子どもたちを支援する団体の代表として、遅ればせながら、発言いたします。

児童養護の世界には、大きく2つのギャップがあります。

==============
■支援をしたい社会(一般企業や個人)と、支援を受けたい施設との間のギャップ
■児童養護施設間のギャップ
==============

この2つのギャップは、支援をするに当たって抑えておくべき、とても大切な要素になります。
まさに、ブリッジフォースマイルの設立の動機です。

私は、7年前、偶然的に児童養護施設の支援ニーズを調査する機会を得ました。
児童養護施設に継続的な支援をしたい外資系企業に、支援についての提案書を書くのが私のミッションでした。

私は、児童養護施設を「孤児院」と理解をして、調査を開始しました。
(実際には、「孤児(親のいない子)」は、1割もいなかったのですが。)

寄付に関するアンケートを取ったり、実際に大量の新品のぬいぐるみの提供を申し出たり、施設とやりとりを進めたのですが、施設側のあまりにも冷たい対応に戸惑いました。

支援をしたい、と申し出ているのに、なんでこんなに冷たい対応をされるのだろうかと、思いました。

あるアンケートの回答に、気になるコメントがありました。

「子どもたちに、いかにモノの大切さを教えるかに苦心しています」

施設を訪問し、インタビューをする中でわかったのは、

「すでに十分な支援を受けている施設とそうでない施設があること」でした。

さらに紐解いていくと、支援を受けていない施設には、事情がありました。

================
●支援を受ける余力がないこと

具体的には、
・寄付やボランティアの質は、玉石混合でより分けるのが大変
・慢性的な人員不足で、受付の負担が大きい
・保管する場所が十分にない
================

インタビューをする中で、初めて施設側の事情を知りました。

・子どもはお揃いの服や靴を身に着けたがらない
・性別、年齢、サイズや好みがあるのでもらっても十分に活用できない
・古本は、同じような子ども向けの本がすでにある
・クリスマスには、腐らせてしまうほど、ケーキが届く
・たまに会う親が、モノを買い与えることで、子どもを喜ばせようとする


さらに、こんな本音も聞けました。

・子どもたちは、招待行事(スポーツイベントや観劇など)の数が多いので
 慣れてしまって、マイナーなものや、二軍のスポーツチームだと感謝の
 気持ちも持てない
・お礼状や子どもの写真など、感謝を期待されるのが気が重い
・ゴミとして処分すべきようなものまで、「まだ使えるから」と持ってこられる
・必要ないと断ろうものなら、怒り出す人もいる


では、欲しいのはなにか、という問いには、圧倒的に「お金」でした。

・建物修繕費
・子どもの習い事や部活にかかるお金
・施設退所後に大学等へ進学するための奨学金
・施設長が個人として保証人となった、アパートの延滞金の支払い

私には、衝撃の事実ばかりでした。

施設間格差が広がることで問題なのは、

同じ公的資金で保護される子どもたちなのに、入る施設によって受けられるサポート内容が異なってくる、ということです。

子どもたちは、施設を選べません。

どの子どもたちをも笑顔にしたいなら、施設がそして社会が変わるしかありません。
私たち、ブリッジフォースマイルは、そんな思いで仕組みづくりに取り組んでいます。
6年活動をしていますが、上手く行っている仕組みもあれば、行ってない場合もあり、まだまだ試行錯誤を続けています。


児童養護施設の子どもたちに支援をしたいと思う方は、まず相手の事情を知ってください。
それから、どうしたら相手が喜ぶのか、よく考えてみてください。

せっかくの善意、おもいやりが、適切に相手に届けられるよう、一緒に知恵を絞りましょう!
そして、どんな環境で生まれ育っても、子どもたちが笑顔でいられる社会に変えていきましょう!

 



drecom_bridge4smile at 09:36|PermalinkComments(9)TrackBack(0)
livedoor プロフィール
記事検索
最新コメント