2010年10月09日

スマイリングプロジェクト 立ち上げの記録3

スマイリングプロジェクト立ち上げ当時の記録、3回目です。
2009年12月ごろの出来事です。

◆保証人は施設長に

スマイリングプロジェクトでは、賃貸契約の保証人を施設長にお願いすることにしました。

これには、理由があります。
施設長が保証人となって、例えば滞納金などの支払いが発生する場合は、公的に保証される、という制度があったからです。


日本の法律では、20歳未満は「未成年」。
未成年との契約は、法的に効力を持たないため、必ず保護者のサインが必要です。

つまり、退所後20歳の誕生日を迎えるまで、子どもは自分だけで「契約」ができないのです。
アパートの契約はもちろん、携帯電話の契約も、クレジットカードの契約も、全て保証人が要るのです。

子どもたちは、親が頼れないために施設にいて、その施設からも18歳には社会に出て、大人として自立を促されるのに、法律では、自立した大人と認められない。

大きな矛盾を感じます。

それでも、親に保証人になってもらえる子が4割程度います。
親と関係が良好であったり、親が生活保護を受けていることを明らかにしなかったりすれば、大丈夫だったりします。

親に保証人になってもらえない子は、施設長や施設職員に保証人になってもらいます。

ところが、中にはアパートの家賃が払えなくなると、滞納を重ねた挙句、荷物を残していなくなってしまう退所者がいるのです。

そうなると、保証人となった施設長は、大家さんから連絡を受け、滞納金(時には原状復帰の費用)を支払い、荷物を引き取ってくるのです。

その費用負担は、これまでずっと施設長の個人負担でした。
よって、施設長は保証人にならない、という姿勢を貫く施設もありました。

そんな背景を踏まえて、ようやく平成19年、厚生労働省から「身元保証人確保対策事業の実施について」という通達が出て、施設長が保証人となったことで被る費用を公的に補助しよう、ということになったのでした。

そのため、スマイリングプロジェクトでは、施設長に保証人になってもらうことをお願いしています。


◆制度がない・・・!?

東京都では、「自立援助促進事業」の「児童福祉友愛互助会基金 杉浦基金」という名称で、運営がされています。

ところが、東京以外の地域で、スマイリングプロジェクトのご案内を進めていったところ、施設長たちがこの制度を知らないのです。

確認のために、ある県の、運営主体であるはずの社会福祉協議会に連絡をしたところ、担当者が、「そのような制度は当県にはありません」というのです。

えっ…!?

慌てて、厚生労働省の担当者に問い合わせました。

担当者は、管轄となる県と政令指定都市から、通達に基づき制度化するかどうかを確認していました。
ほとんどの県と政令指定都市が、その制度を運用すると回答していました。

つまり、制度が制度としてきちんと整備、運用されていなかったのです。

今、スマイリングプロジェクトで入居している退所者は、全て施設長に保証人となっていただいています。


こういうことは、よくあることなのかもしれません。
いずれにしても、やってみなければわからない実態でした。

しかしながら、この一件は、私がメンバーからの不信を招く大きな出来事となってしまいました。
林が施設から得たと言っている情報は、どこまで信頼できるのかわからない、と。

drecom_bridge4smile at 09:09│Comments(1)TrackBack(0) 自立支援 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by 一   2010年11月08日 12:01
簡単でない事をやっておられますね。
素晴らしいです。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

えりほ

記事検索
最新コメント