2019年05月10日
カナエールの反省
当事者スピーチという手法を使った、奨学金支援プログラム「カナエール」では、大きな共感と応援を集め、96人の若者に1億4300万円を提供できました。
(カナエール終了の経緯はこちら)
一方で、カナエールで反省することがいくつもあります。
◆スピーチを奨学金受給の条件としたこと。
当事者によるスピーチは、小さなNPOがお金を集めるための苦肉の策でした。
ある寄付者から言われたことがあります。
「本当はスピーチなんかしなくたって、大学に進学できる社会になったらいいのにね。」
実際、進学したいけど、お金がないから、嫌だけどスピーチするしかない。という子もいました。
ただ進学したいだけなのに嫌なスピーチを強制してしまい、申し訳なかったと思います。
◆感動するレベルを求めたこと。
会場に集まってもらい、スピーチを聴いてもらう目的は、前述の通りお金を集めるためでした。
せっかく頑張って登壇してもらっても、お金が集まらなければ奨学金を払い続けることはできません。
そのため、「夢を語る」と言っても、例えば「パティシエになりたい!」とただパティシエの魅力を語るだけでは、彼らのおかれている環境や進学への切実な思いは伝わらない。
相手の心に届かなければ、お金を出してもらうことができないため、スピーチはレベルの高いものを求めました。
生い立ちを語ることは強制しない、本人の意思に委ねることにしていましたが、振り返ってみると毎年半分くらいの人が生い立ちに関わる内容をスピーチに盛り込んでいました。
そのため一部の方から「かわいそうな経験を話してお金を集めている」という批判を受けました。
それぞれの思いを一生懸命に届けたいと語られたスピーチでも、そんな風にいわれてしまう仕組みだったことを、申し訳なく思います。
◆自己開示のリスクへの配慮が至らなかったこと。
無理やり生い立ちを聞き出すようなことは止めてください、とエンパワ(サポートボランティア)にお願いをしていました。
しかし、自発的に自己開示してくれるものについては、問題ないと考えていました。
後から、自分のことを話しすぎてしまった後悔があると話している人がいることを人伝に聞きました。
当事者が人前で語るときに、注目されたい、相手の期待に応えたい、もっと喜ばせたい、自分の秘密を話さなければ価値がないと思われてしまう、といった感情があることに、配慮が至りませんでした。
前述の通り、スピーチの質を上げる目的からスピーチコンテストとして賞をもうけたことも、自己開示を促すことにつながりました(ただし奨学金は一律)。申し訳なかったと思っています。
===
コエールは、これらの反省を踏まえて、対策を取っています。
・活動参加前に、想定されるリスクや対策について説明し、了解を得たうえで申し込みをしても らう。
・自己開示のリスクや、経験を安全にシェアする方法を学ぶワークショップを実施する。
・スピーチの登壇を強制しない。途中で参加辞退できるようにする。
・社会的養護出身者が企画運営に携わり、当事者の不安や不満を聞き取って運営に反映する。
・スピーチ原稿を事前に第三者(協力者、当事者活動推進者など)に確認してもらう。
もちろん、これらをやったからと言って万全とは言えません。
本人が話したい、と言うことをどこまで周りが制御するのが正解なのかもわかりません。
リスクと向き合い、考え続けるしかないと思っています。
(カナエール終了の経緯はこちら)
一方で、カナエールで反省することがいくつもあります。
◆スピーチを奨学金受給の条件としたこと。
当事者によるスピーチは、小さなNPOがお金を集めるための苦肉の策でした。
ある寄付者から言われたことがあります。
「本当はスピーチなんかしなくたって、大学に進学できる社会になったらいいのにね。」
実際、進学したいけど、お金がないから、嫌だけどスピーチするしかない。という子もいました。
ただ進学したいだけなのに嫌なスピーチを強制してしまい、申し訳なかったと思います。
◆感動するレベルを求めたこと。
会場に集まってもらい、スピーチを聴いてもらう目的は、前述の通りお金を集めるためでした。
せっかく頑張って登壇してもらっても、お金が集まらなければ奨学金を払い続けることはできません。
そのため、「夢を語る」と言っても、例えば「パティシエになりたい!」とただパティシエの魅力を語るだけでは、彼らのおかれている環境や進学への切実な思いは伝わらない。
相手の心に届かなければ、お金を出してもらうことができないため、スピーチはレベルの高いものを求めました。
生い立ちを語ることは強制しない、本人の意思に委ねることにしていましたが、振り返ってみると毎年半分くらいの人が生い立ちに関わる内容をスピーチに盛り込んでいました。
そのため一部の方から「かわいそうな経験を話してお金を集めている」という批判を受けました。
それぞれの思いを一生懸命に届けたいと語られたスピーチでも、そんな風にいわれてしまう仕組みだったことを、申し訳なく思います。
◆自己開示のリスクへの配慮が至らなかったこと。
無理やり生い立ちを聞き出すようなことは止めてください、とエンパワ(サポートボランティア)にお願いをしていました。
しかし、自発的に自己開示してくれるものについては、問題ないと考えていました。
後から、自分のことを話しすぎてしまった後悔があると話している人がいることを人伝に聞きました。
当事者が人前で語るときに、注目されたい、相手の期待に応えたい、もっと喜ばせたい、自分の秘密を話さなければ価値がないと思われてしまう、といった感情があることに、配慮が至りませんでした。
前述の通り、スピーチの質を上げる目的からスピーチコンテストとして賞をもうけたことも、自己開示を促すことにつながりました(ただし奨学金は一律)。申し訳なかったと思っています。
===
コエールは、これらの反省を踏まえて、対策を取っています。
・活動参加前に、想定されるリスクや対策について説明し、了解を得たうえで申し込みをしても らう。
・自己開示のリスクや、経験を安全にシェアする方法を学ぶワークショップを実施する。
・スピーチの登壇を強制しない。途中で参加辞退できるようにする。
・社会的養護出身者が企画運営に携わり、当事者の不安や不満を聞き取って運営に反映する。
・スピーチ原稿を事前に第三者(協力者、当事者活動推進者など)に確認してもらう。
もちろん、これらをやったからと言って万全とは言えません。
本人が話したい、と言うことをどこまで周りが制御するのが正解なのかもわかりません。
リスクと向き合い、考え続けるしかないと思っています。